- 小児皮膚科について
- あせも(汗疹)
- 乳児湿疹
- とびひ(伝染性膿痂疹)
- 水いぼ(伝染性軟属腫)
- いちご状血管腫(乳児血管腫)
- 皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹
- おむつかぶれ
- にきび
- 見張りいぼ
- 鵞口瘡
- こどものひふ
小児皮膚科について
小児皮膚科は、赤ちゃんから思春期頃までの子供を対象に、皮膚に関するトラブルを専門的に診る診療科です。
生まれたての新生児の肌は一見すべすべしているように見えますが、実はとてもデリケートで、成長とともに皮脂量が減少し、乾燥しやすくなる傾向があります。
皮膚のバリア機能もまだ未熟なため、外部からの刺激や感染に対して無防備な状態にあり、ちょっとしたことでも肌トラブルを起こしやすくなります。
当院では、こうした子供の皮膚の特性を踏まえ、適切な治療だけでなく、再発予防や日常的なスキンケアの方法についてもご家族に丁寧にアドバイスしています。気になる症状がある場合は、早めの相談をおすすめします。
あせも(汗疹)
子供に多く見られる皮膚トラブルの一つに「あせも(汗疹)」がありますが、実はこの汗疹には2つのタイプがあります。
一つは汗の出口であるエクリン腺が詰まることで発症するもので、小さな水ぶくれのような発疹が出ます。これが本来の「汗疹」にあたります。
もう一つは、汗をかいた状態が続くことで、汗に含まれる成分が皮膚を刺激し、赤みやかゆみなどの炎症を起こすタイプです。特にアトピー性皮膚炎や乾燥肌のお子様では、この刺激性のあせもが起こりやすく、掻きむしることで悪化することもあります。あせもをかきむしり、とびひを併発することがあります。皮膚をきれいな状態に保つことと保湿を心がけることが予防と改善の鍵となります。また赤みやかゆみが強い場合には、ステロイド軟膏塗布や抗ヒスタミン薬内服する必要があることがあります。診察した上で、医師と相談してみましょう。
夏場の保湿に関しては、お子様の好みに応じてローションタイプやフォームタイプを使用しても問題ありません。また乾燥が目立たない場合には必ずしも保湿しなくても構いません。日焼け止めに関しては、長時間の日差しを浴びる時には必ず塗布するようにしましょう。紫外線の有害な影響についての報告が近年増えています。その際にお子様の日焼け止めは、可能であれば刺激の少ないものを塗りなおしながら使用することをすすめています。気になる症状があればお気軽にご相談ください。
乳児湿疹
乳児湿疹の代表的なものとしては、皮脂の分泌が盛んな新生児期に現れる「新生児ざ瘡」、頭や顔に黄色いかさぶたのような皮膚変化を伴う「乳児脂漏性皮膚炎」、皮脂不足による乾燥からくる「皮脂欠乏性湿疹」、よだれやおむつなどの接触によって起こる「接触性皮膚炎」などがあります。
皮膚をきれいに保ち、保湿することで改善していくことが多いですが、なかなか治らない場合にはばい菌や真菌(カビ)が悪さをしていることがあるので、受診していただく方が良いでしょう。受診時には、適切なスキンケアをご説明します。
乳児期の湿疹は、その後の食物アレルギーにつながっていくことが報告されています。このため、湿疹をしっかり治すことはとても大切です。
また乳児期の湿疹を、アトピー性皮膚炎ではないか、と心配される保護者の方が多くいらっしゃいます。大抵は数か月で自然と改善していくことがほとんどです。しかし、この時期の湿疹は、アトピー性皮膚炎との鑑別が難しいことが多く、湿疹を繰り返すのかなどの経過を見ていく必要があります。
とびひ(伝染性膿痂疹)
とびひは、掻把などによる皮膚にできた小さな傷口などから皮膚に常在する細菌が侵入し、感染することで起こる皮膚の病気です。正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ばれています。発疹は発赤、水ぶくれやかさぶたを伴い、強い痒みにより患部を引っかいたり触れたりすることで、まるで火の粉が飛び火するように他の部位にも次々と広がっていくため、「とびひ」と呼ばれるようになりました。とびひの治療で最も大切なことはwashoutという洗浄になります。可能であれば1日2回しっかり泡タイプの刺激の少ないボディソープで患部を良く洗い、しっかり流しましょう。さらに抗生剤の外用と数日間の抗生剤の内服、場合によってはかゆみに対して抗ヒスタミン剤の内服を追加し治療を行います。
水いぼ(伝染性軟属腫)
水いぼは、表面が滑らかで光沢のある水疱を有するふくらみが皮膚にできるウイルス性の感染症です。原因は「伝染性軟属腫ウイルス」と呼ばれるもので、直接的な皮膚の接触や、タオル・浮き輪・ビート板といった共用物を介して感染することがあります。免疫機能が未熟な幼児期に多く見られます。
水やお湯そのものを通じた感染は起こらないため、プールや入浴を避ける必要はありません。基本的には時間とともに自然に治癒することが多いですが、かき壊すと周囲に広がってしまうため注意が必要です。特にアトピー性皮膚炎のあるお子さんは、皮膚のバリア機能が弱いため広がりやすい傾向にあります。爪を短く切り、スキンケアやシャワー後の清潔保持を心がけることが、感染予防につながります。
自然と消失するまでには平均で10-12か月かかると言われています。早く治したい、という場合には、鉗子を用いて摘出することができます。痛みを伴うため、事前に麻酔薬の入った貼布テープを患部に貼ってきていただいてから摘出します。摘出した後も、お子さまの免疫がこのウイルスに対して成熟するまでは繰り返すことがあるので、摘出治療を行う際にはお子さまとよく話し合ってから決めてください。
摘出する方法よりは効果が少ないですが、水いぼが広がるのを予防したり、消退させるクリームを販売しています。銀を含むクリームで一定の効果が報告されています。軟膏であり、特に大きな副作用はなく、良く行われるポピュラーな治療です。
いちご状血管腫(乳児血管腫)
いちご状血管腫は、皮膚に赤く盛り上がったしこりができる良性の血管腫で、見た目がいちごに似ていることからこの名で呼ばれています。原因は毛細血管の異常な増殖で、生まれて数週間以内に目立ち始め、成長とともに大きくなることがあります。
一般的には1歳前後で増殖が止まり、その後は自然に縮小していくケースがほとんどです。日本では比較的珍しくなく、特に女の子に多く見られます。
近年はいちご状血管腫に対して、早期のレーザー治療や、ヘマンジオルシロップという血管に作用する飲み薬での治療が行われています。ご希望の方には専門施設への紹介を行っています。
皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹
皮脂欠乏症は、皮脂の分泌が減少して皮膚が乾燥する状態を指します。これにより、肌にかゆみやかさつきが生じ、湿疹を伴うようになると「皮脂欠乏性湿疹」と診断されます。特に生後6カ月以降の乳児は、ホルモンの影響で皮脂分泌が急激に減少するため、この時期に乾燥肌の症状が出やすくなります。
また秋から冬に生まれたお子さまに見られることが多いと言われています。
白い粉を吹いたような状態や、ひび割れ、かゆみを訴える様子がある場合は早めの保湿ケアが重要です。家庭でのスキンケアでは十分な保湿を行い、症状が改善しない場合や湿疹がひどくなる場合には医療機関での治療が必要になります。
保湿については、クリームタイプ、ローションタイプ、フォーム、ワセリンなど様々な剤型がありますが、どのタイプを使用していただいても効果に大きな差異はないとの報告が多くあります。お子さまが好まれるものを塗布することをすすめています。
おむつかぶれ
おむつかぶれは、おむつ内の皮膚が尿や便に長時間触れることで炎症を起こし、赤みやただれを生じる皮膚トラブルです。特に乳幼児期は皮膚が薄くデリケートなため、わずかな刺激でも炎症を起こしやすい状態です。また下痢や軟便などの症状がある時に、良く合併します。
原因としては、排泄物に含まれるアンモニアや酵素、湿気による蒸れ、摩擦などが挙げられます。おむつかぶれを予防するには、汚れたらすぐに交換することが重要です。
おむつ交換時は、こすらずにぬるま湯やウェットコットンでやさしく洗浄し、十分に乾かした後にワセリンや亜鉛華軟膏などで保護します。症状が強い場合には、医師の指示のもとでステロイド外用薬や抗真菌外用薬を使用することもあります。
にきび
成長期は性ホルモンのバランスが変化し、皮脂の分泌が増えます。また肌の再生サイクルは疲労やストレス、感染などで乱れやすくなり、肌サイクルが乱れると、角質が毛穴をふさぎ、皮脂が毛包に溜まり、ここにアクネ菌の繁殖が起きることで炎症が起き、ニキビと言われる状態となります。ニキビは症状の程度で微小面皰、面皰(白ニキビと黒ニキビ)、赤ニキビ、黄色ニキビの4つの段階に分けられます。
赤ニキビ、黄ニキビとなると溜まった膿が皮膚を破って排出するためニキビ痕ができやすくなります。ニキビ痕になると元の肌に回復するのが難しくなります。
ニキビは、きちんと洗浄するなどのスキンケアをし、症状が進行しないようにしましょう。
ニキビの治療
当院では、おもに以下の外用薬(クリームやゲル)での治療を行っています。組み合わせて治療することが多くあります。
- ピーリング作用のあるディフェリンゲル、ベピオゲル、ベピオウォシュゲル
- 抗菌作用のあるアクアチムクリーム、ダラシンTゲル、ゼビアックローション
- ピーリングと抗菌作用ともにあるデュアック
上記の外用のみでは改善しない場合には短期間の抗生剤の内服をすすめることがあります。
見張りいぼ
肛門周囲の皮膚が盛り上がって見える症状で、生後7か月から2歳の女児に多く見られます。便秘や硬い便などで切れ痔が慢性化し、繰り返されることで肛門の裂け目が炎症を起こし、盛り上がって症状が出現します。比較的短期間で治ることが多いですが、再発することもあるため、便秘などの改善を図ることも大切です。
見張りいぼは通常、塗り薬で経過を見ます。
鵞口瘡
カンジダという真菌(カビ)の一種が口腔内で感染したときに起こり、口腔内カンジダ症とも呼ばれます。乳児に多く、ミルクカスと間違えられることが良くあります。
新生児期だと、お母さんの産道から感染することもあります。また、哺乳瓶からの感染も稀にあるために洗浄について見直しましょう。
鵞口瘡は通常は自然と治るので、特別な治療は必要ありませんが、経過を見ても改善しない時には口腔内に塗布できる抗真菌剤を塗布することがあります。
こどものひふ
子どもの包茎と包皮亀頭炎
子どもの包茎は、成長とともに自然に包皮が剥けていくケースがほとんどです。多くの場合、特別な治療を必要とせず経過観察で問題ありません。ただし、一部のケースでは治療を要する包茎もあり、適切な判断が求められます。お子さまの包茎に関して不安がある場合は、まずは一度当院までご相談ください 。